
スロージギングに於いて、PEラインは「魚との命綱」です。
どれだけ高価なリールやロッドを使っていても、ラインが切れればすべては水の泡。
PEラインは高感度で伸びが少なく、深場のアタリも明確に伝えてくれる頼もしい存在ですが、その一方で、使い続けるうちに確実に劣化していく消耗品でもあります。
とはいえ、「どのタイミングで交換すればいいのか分からない」とか、「まだ使える気がするけど・・・」と感じている人も多いと思います。
この記事では、PEラインの正しい交換時期を見極めるサインから、劣化を早める原因、さらには長持ちさせるための簡単メンテナンス術までを徹底解説します。
「せっかく大物が掛かったのにラインブレイク」、なんて後悔しないためにも、ご自身のタックルをチェックしながら最後までご覧下さい。
それでは始めます。
PEラインの役割と劣化による致命的な問題
スロージギングは、繊細なジグ操作と、水中のわずかな潮や魚の気配を捉える「感度」が釣果を左右します。
その生命線となるのが、高強度ポリエチレン繊維を編み込んだPEラインです。
情報の伝達
PEラインは、潮の流れやジグの姿勢、そして魚の微細なバイト(アタリ)を正確にアングラーに伝えます。
それが、劣化により毛羽立つと、水の抵抗が増したり、ラインの振動が吸収されるなど、感度が著しく低下してしまいます。
強度と安心感
大物とのファイトの際、PEラインはリールのドラグに追従し、魚の突っ込みを受け止める最後の砦となります。
ラインが劣化すると、大物の一瞬の突っ込みに耐えられず「ラインブレイク」を引き起こし、ジグロストだけでなく、大物を逃がしたという精神的ダメージが大きくなります。

操作性の悪化
PEラインが毛羽立つと、ガイドとの抵抗が増大し、フォールスピードが落ちたり、繊細なジグ操作が困難になります。
PEラインの交換は、これらの要素全てをリセットし、新品同様のパフォーマンスを取り戻すための、最も効果的なメンテナンスと言えます。
PEラインの寿命を縮める主な原因
PEラインは、ナイロンやフロロカーボンに比べ耐久性が高いとされていますが、その繊維は非常にデリケートです。
寿命を縮める具体的な原因を知り、対策を講じることが長持ちの秘訣です。
物理的な摩耗
PEライン劣化の約8割が摩耗によるものと言われています。
【ガイドとの摩擦】
ジグのフォール時や巻き取り時、それにファイト時は、ラインはガイドリングと常に擦れ合っています。
特に古いガイドや傷ついたガイドは、ラインに致命的なダメージを与えます。
【おまつりの際の摩擦やキンク】
隣の釣り人のラインとおまつりした場合も、ラインの劣化に繋がります。
特に、複雑におまつりして、ラインが折れ曲がるようにキンクした場合、その部分が簡単に切れてしまう事があります。
紫外線による劣化
長期間にわたる直射日光下での使用は、ラインの表面を硬化させたり、コーティング剤を劣化させたりする原因となります。
これにより、ラインの柔軟性が失われ、物理的な衝撃に対する耐性が低下します。
塩分と汚れの蓄積
海水中の塩分が、ラインの編み込みの隙間に結晶として残ると、釣行中にリール内でラインが動く際に、硬い塩の結晶が内部の繊維を削り取るような作用をします。
また、砂や泥、プランクトンなどの微細な汚れも同様に、ラインに付着して摩擦ダメージを増幅させます。

巻き込みによるダメージ
ラインを強く巻きすぎていたり、長期間同じ状態で保管していると、巻かれたラインの間で圧力がかかり、ラインが変形したり、局所的に強度が低下する場合があります。
また、 根掛かりや、頻繁な大物とのファイトは、見た目には分からなくても、ラインの強度を少しずつ確実に削っています。
PEライン交換のサインを見逃すな!
PEラインは、見た目の変化で劣化を判断できることが多いですが、中には気づきにくいサインもあります。
毛羽立ちやささくれ
毛羽立ちは、ガイドやリーダーの結束部で摩擦が生じた証拠でです。
繊維が切れ始めているため、強度は大きく低下しています。
色褪せや退色
表面のコーティングが剥がれている状態です。
表面の滑りが悪くなり、フォールスピードの低下や、感度の低下にもつながります。
ラインが平たく潰れている
スプール上での圧力や摩擦で繊維が押しつぶされ、強度が低下していると考えられます。
見た目よりも劣化が進んでいるケースが多いのも特徴です。
結束の際に滑ったり解けやすい
PEラインの表面が摩耗し、リーダーとの摩擦力が弱まっています。
結束強度が落ちている危険サインです。
釣行回数や使用時間から見る交換の目安
PEラインの寿命は、一概に「何回使ったら交換」と言えるものではありませんし、使用頻度、釣行エリア、水深、そしてラインの太さなどによっても大きく変わります。
以下は、一般的に言われている釣行回数などによる交換時期の目安になります。
【釣行回数による交換時期の目安】
●毎週釣行する方・・・2~3カ月毎に交換。
●月に2~3回釣行する方・・・3~4カ月毎に交換。
●月に1回程度の釣行・・・6~8カ月毎に交換。
※1回の釣行時間を7~8時間とし、且つ1台のリールを使い続けた場合。
以上となりますが、あくまでも目安になりますので、ご注意下さい。
個人的には、丁寧に取り扱ったり、ちゃんとメンテナンスをしていれば、もっと長い期間使い続けられると思っています。

爺の場合
爺の場合、多い時で月に3~4回、少ない時で月1回、平均で月に2回程度の釣行となりますが、12月~2月の厳寒期はあまりの寒さから、釣りには行きません。
ですので、釣りの期間は9カ月となり、釣行回数=9カ月×2回/月≒18回 となります。
上記の交換時期の目安からいくと、年に2回はライン交換しなければならない事になりますが、よほどのトラブルが無い限りは、シーズン中は交換したことがありません。
これは、その季節のターゲットなどによって、3台のリールを使い分けているためで、計算上1台のリールで、年に6回の釣行に使用する事になります。
それに、爺は友人の小型船で釣りに行っていますので、1回の釣行時間も、長い時で6時間程度、短い時だと3時間ほどで帰って来るため、トータルの釣行時間も短くなります。
では、実際にどのくらいの頻度で交換するかと言えば、1~2シーズンに1回ラインを裏返して使いますので、ラインの全交換は2~3シーズンに1回となります。
裏返しの時期は、ラインの劣化や、高切れなどのトラブルによって違いがありますが、1シーズンで全交換という事はありません。
「そんなに使って大丈夫?」と思われるかもしれませんが、釣行後にメンテナンスをしっかり行う事で、大きなブリが掛かっても、ラインの劣化が原因で切れた事はありません。
と言うのも理由の一つですが、最も大きな理由は「お小遣いが少ない」からで、少ない小遣いをやりくりしなければならない、肩身の狭いサラリーマンの性でしょうか。
それでも何とか釣りは続ける事が出来ていますので、良しとしています。
PEラインを長持ちさせるためのメンテナンス術
交換サイクルを延ばし、常に最高の状態でラインを保つための日々のメンテナンスは非常に重要です。
真水で洗浄
釣行後は出来る限り早く、リールに巻いたままの状態で、真水のシャワーをPEライン全体にかけ、塩分と汚れを洗い流します。
ぬるま湯を使っての洗浄は厳禁で、リールのグリスやオイルを流してしまうため、絶対にしないようにして下さい。
ぬるま湯できちんと塩を洗い流したい場合は、一度リールから全部取り出して、洗浄・塩抜きを行って下さい。
なお爺の場合は、釣行の際にミネラルウォーターを真空ボトルに入れて持って行き、それが残った場合は、納竿の際にサッとラインに掛け、さらに帰宅後にシャワーを掛けています。
陰干し
洗浄後は、必ず風通しの良い日陰で完全に乾燥させますが、直射日光はラインの劣化を早めるため厳禁です。
また可能であれば、完全に乾かすために、ラインをリールから引き出し、広い場所に広げておくのが理想的です。
しかし、以前新聞紙を部屋に広げ、その上にラインを引き出して置いたら、昼寝しているうちに孫が遊びに来て、それをぐちゃぐちゃにされたことがあります。
結局、絡まったラインを全て解くことは出来ず、全交換する事になりましたので、皆さんも注意して下さい。
PEライン専用コート剤の活用
PEライン専用のフッ素系・シリコン系コート剤を定期的に塗布することで、ライン表面の撥水性が高まり、水の抵抗が減ります。
また、ガイドとの摩擦抵抗を低減し、毛羽立ちの発生を遅らせる効果があります。

リーダー結束部のカット更新
PEラインとリーダーの結束部は特に負担がかかる箇所であるため、釣行のたびに数メートルほどカットして新たに結び直す事で、トラブルを減らすことが出来ます。
保管時は直射日光と高温を避ける
車内放置や夏場の倉庫保管は、絶対にNGです。
紫外線や高温はPEの劣化を加速させますので、室温が高くならない日陰の場所で保管する事が重要です。
裏返しで延命!
PEラインは、スプールの外側ばかりが使われて劣化していきますので、内側の部分のラインはそれほど劣化も進んでいません。
これにより、ラインを「裏返す」ことで、使用していなかった部分を再利用出来、結果、寿命を約2倍に延ばすことが可能でとなります。
しかし、この裏返す作業は非常に手間が掛かり大変ですが、この作業を楽にしてくれるツールがあり、それが第一精工の「高速リサイクラー2.0」です。
これが有ると無いとでは、作業の効率が全く違いますし、今これがなかったら、爺はライン交換すらやりたくないと思うくらいの優れものです。
これはもう釣り人の必須アイテムです。
ライン交換で得られるメリット
PEラインの交換は、スロージギングという繊細でパワフルな釣りにおいて、最高のパフォーマンスを引き出すためのメンテナンスと言えます。
【ライン交換で得られるメリット】
●感度の劇的な回復
ラインの張りが戻り、水中の微細な情報を得られる。
●安心感の回復
高切れ等の不安から解放され、大物とのファイトに集中できます。
●フォールスピードの改善
ラインの滑りが良くなり、操作性の向上やスムーズな釣りが可能になります。
釣りの安全と、一生に一度の大物との出会いを逃さないために、ご自身のPEラインの状態を定期的にチェックする事が重要です。
ライン交換のまとめ
PEラインは、スロージギングにおける最重要パーツです。
たとえロッドやリールが高性能でも、ラインが劣化していれば意味がありませんし、切れるリスクを抱えたままの釣行は、集中力も落ち、釣果にも影響します。
「まだ大丈夫」ではなく、「信頼できるうちに交換する」、この意識が安全で快適なスロージギング釣行を支えます。
また、裏返しのテクニックや日々のメンテナンスを組み合わせれば、コストを抑えつつ常に安心して釣りに挑めます。
PEラインは消耗品ですが、同時にアングラーの感度と直結する「釣果の要」ですので、
定期的にチェックし、早めの交換を心がける事が大切です。
それではまた!



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