
「今日は潮が動いているはずなのに、なぜか釣れない」、スロージギングを続けていると、そんな経験を何度もするはずです。
スロージギングに於いて、タイドグラフ(潮位表)を確認することは基本中の基本ですが、いざ海に出てみると全く違う状況に直面することが多々あります。
これは、タイドグラフが示す「潮位の上下」と、アングラーが求める「海水の流れ」が必ずしも一致しないからです。
本記事では、潮位表の数字だけでは決して読み取ることができない「真の潮流」の正体を解き明かします。
現場で感じる水の抵抗、ラインの角度、そして魚の活性との相関関係等々、これらを理解することで、あなたの釣りは「釣れた」から「釣った」へと変わるはずです。
それでは始めます!
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なぜ「数値」と「現場」はズレるのか?
タイドグラフ(潮見表)は、あくまで天体の配置から計算された「潮位(水面の高さ)」の予測データに過ぎません。
しかし、スロージギングアングラーが知りたいのは「水面の高さ」ではなく、ジグが置かれている「水中の流れ」です。
潮位の変化と潮流は比例しない
多くの人が陥る罠が、「干満の差が大きい=潮が速く流れる」という思い込みではないでしょうか?
確かに理論上はそうですが、実際には地形や海域の特性により、潮位が最も動く時間帯に流れが止まったり、逆に潮止まりの時間に激流になったりすることがあります。
沿岸部や入り組んだ地形では、水が入り込む、あるいは出ていくのに物理的な時間がかかるため、グラフ上の時刻から30分〜1時間以上のズレが生じるのは日常茶飯事です。
「潮止まり=釣れない」という固定観念を捨てる
タイドグラフ上で「動きがない」とされる時間帯でも、海の中では「底潮」だけが動き続けているケースがあります。
実はこの「グラフ上の静止」と「現場の動き」のギャップこそがチャンスです。
他の釣り人が「潮が止まったから休憩だ」と手を休めている間に、海中のわずかな変化を捉えられるかどうかが、竿頭(さおがしら)への分かれ道になります。

気圧や風が海面に与える影響
グラフに載らない要素として「気圧」があります。
低気圧が接近すると海面が吸い上げられ、グラフ上の予測よりも潮位が高くなります。
これに強風が加わると、表面の海水だけが押し流され、中層以下の流れと完全に乖離してしまいます。
数値だけを信じて海に出ると、この「見えない誤差」に翻弄されることになります。
スロージギングの勝敗を分ける「二枚潮」の正体
スロージギングを難しくし、かつ面白くする最大の要因が「二枚潮などの複雑な潮」です。
タイドグラフには書かれていないこの現象を、いかに攻略するかが鍵となります。
表層の風と深層の潮が逆転するメカニズム
例えば、西風が強く吹いている状況で、潮流が東から西へゆっくり流れている場合、船は風に押されて西へ進みますが、海中のジグは東へ流される潮に引かれます。
これが「二枚潮」の典型的なパターンです。
このように、表層・中層・低層で水の動く方向や速さがバラバラになると、PEラインは水中では真っ直ぐではなく、複雑な曲線を描くことになります。
PEラインが描く曲線を脳内で可視化する
ジグが着底した時、ラインがどのような形状で水中に存在しているか想像する事が重要です。
【ラインの状態】
◆ J字状態
表層の潮が速く、底が動いていない状況です。
ラインが大きく膨らみ、ジグを動かそうとしても「糸フケ」を取るだけの状態です。
◆ S字状態
中層に逆向きの流れがある状況で、ジグの重みを感じにくく、フォール中のアタリが完全にかき消されます。
スロージギングにおいて、ラインが「S字」を描いている状態は致命的です。
なぜなら、ロッド入力がジグに伝わるまでに大きなタイムラグが生じ、スロー特有の「横を向かせる」動きが死んでしまうからです。

二枚潮を攻略するためのラインメンディング
このような状況を打破するには、あえて重いジグを選択し、ラインを張る力を強めることが基本です。
しかし、それだけでは不十分です。
投入時にサミングを強めにかける、あるいは一度着底させた後に大きく巻き上げてから再度落とし直すことで、ラインの「たわみ」を物理的に除去する作業が必要です。
このメンディングを怠れば、そう簡単に魚には出会えません。
「潮が重い」の正体とは?
船上でよく聞く「潮が重くなってきた」というベテランの言葉。
これは単に流速が速いことを指しているわけではく、スロージギングにおける「潮の重さ」とは、ジグに掛かる「水圧の抵抗」などの情報を指します。
「流れている潮」と「押してくる潮」の違い
ただ川のように流れているだけの潮は、船も一緒に流れる「ドテラ流し」では意外と軽く感じます。
一方で、魚の活性が上がる「本当に良い潮」は、ジグを持ち上げた瞬間にしっかりとした潮流の手応えがあります。
このような状況の時こそ、ジグを横に向かせた際の滞空時間が長くなり、食わせの間が生まれます。

ジグが動く「層」を見つける感度の磨き方
ジグを巻上げてくる際、ある一定のレンジ(層)で急にハンドルが重くなる箇所があれば、そこが「潮の境目(潮目)」です。
この境目付近にはベイトが溜まりやすく、ターゲットもその直下で待ち構えている場合が多々あります。

ドテラ流しとスパンカーにおける「潮の捉え方」
現場で最も分かりやすい潮読みの方法が、船の流れ方を見ることです。
ドテラ流しなのか、スパンカーを使っているのか、など、船の向きとライン角度を見れば、今どの層の潮が効いているのかが見えてきます。
船の流れる方向と潮の向きの相関関係
【船の流し方】
◆ ドテラ流し(風任せ)
風と潮の両方の影響をダイレクトに受けます。
風が強ければ潮の影響を上回り、ラインが斜めに出すぎて底取りが困難になります。
◆ スパンカー運用(船首を風に向ける)
船を潮の流れと同調させる、あるいは定位置に留めようとする流し方です。
ここではタイドグラフの数値が比較的正確に反映されやすいですが、船長が微調整しているため、アングラー側は「船がどっちに動かされているか」を常に意識する必要があります。

風と潮がケンカする「スカスカな潮」の対処法
最も釣りにくいのが、潮の流れと風向きが真逆の場合で、船は動かないのに、海中の潮だけが速い状況です。
この時、手元には全く抵抗が来ない「スカスカ」な感覚になりますが、実はジグは激しく流されています。
こうした「感覚の空白」が生まれる時こそ、タイドグラフを一度忘れ、ラインの放出角度だけで海中の動きを判断する必要があります。

ジグが真下に落ちる時の「釣れる」サイン
理想的なのは、わずかにラインが斜めに入り、適度な抵抗を感じながらジグがコントロールできている状態です。
しかし、完全な無風・無潮流でジグが真下に落ちる「バーチカル」な状況も、スロージギングでは大きなチャンスです。
なぜなら、ラインの弛みがゼロであるため、ミリ単位のロッド操作が100%ジグに伝わるからです。
この時、グラフが「小潮の止まり」を指していても、テクニック次第で爆釣することが可能です。

地形が作り出す「見えない潮流」を読み解く
海の中は平坦ではなく、山があり、谷があり、巨大な岩礁があります。
タイドグラフが示すのは広域的な「面」の動きですが、魚が居るのは地形が作り出す「点」の動きの中です。
「根」の裏側の澱み(淀み)
強い潮流が根(岩礁)にぶつかると、その背後には「反転流」や「澱み」が発生しますが、これは川の流れをイメージすると分かりやすいと思います。
激流でジグが流されすぎる時でも、根の裏側のわずかなスペースだけは釣りが成立するほど穏やかで、そこにベイトフィッシュが逃げ込んでいる場合があります。
ピンポイントでこの澱みを狙い撃てれば、一人勝ちできる可能性があります。
湧き昇る潮が魚を狂わせる
潮流が急峻な駆け上がり(斜面)にぶつかると、深層の栄養豊富な水が表層へ押し上げられる「湧き昇る潮流」が発生します。
そこにはプランクトンが集まり、それを追って小魚、さらにそれを追って大型のブリや根魚が集結します。
ジグを落としている最中、本来なら着底するはずの深さよりも手前でフワッと軽くなる感覚。
それは単なる食い上げるアタリではなく、湧き昇る潮にジグが乗ったサインかもしれません。
その「水の突き上げ」を感じたら、そこがその日のA級ポイントかも。

底潮が効き始める瞬間を見逃さない方法
「上潮は流れているが、底潮が死んでいる」という状況はスロージギングにとって最悪の状況の一つです。
しかし、下げ潮から上げ潮に切り替わるタイミングなどで、一瞬だけ底潮が「動き出す瞬間」があります。
この時、今まで泥を叩いているような鈍い感触だった底付近で、ジグが急に「キレ」を取り戻し、その「一瞬の動き出し」に、大型魚のスイッチが入ります。

「潮の動き」を見るポイント
抽象的な話が続きましたが、次回からの釣行で具体的に何をチェックすべきかをまとめましたので、ご紹介します。
ラインの「ふけ方」と「角度」の観察
投入したジグが着底するまでのラインの出方を見ます。
途中で急にラインが横に走り出したり、逆に加速したりする場合、そこには必ず「層」が存在します。
また、回収時のラインの角度が自分の立ち位置から見て、船の下に入り込むのか、遠ざかるのか、これだけで船の挙動と潮の向きがある程度把握できます。
ジグのフォールスピードの変化に集中する
同じジグ、同じ水深でも、潮の具合によってフォールスピードは秒単位で変わります。
【ジグのフォールスピード】
◆ 速くなる場合
潮がジグを下に引っ張っている、または船が潮に逆らって動いている。
◆ 遅くなる場合
下から突き上げる潮がある、または糸フケが多量に出ている。 この変化をカウントダウンで把握できるようになると、魚の活性を予測できるようになります。
魚探に映るベイトの「層」と「向き」
もし船長が魚探を見せてくれるなら、ベイトの映り方に注目してください。
ベイトが横に長く伸びていれば潮が安定して流れており、固まって固着していれば潮が緩い、あるいは外敵(フィッシュイーター)に追い詰められている可能性があります。
周囲のゴミや泡の動き、鳥の挙動
海面の観察も重要で、潮目にはゴミや泡が溜まります。
また、鳥が海面を凝視しながら一箇所に留まっている場合、その直下では潮がぶつかり合い、ベイトが浮き上がっている可能性大です。
これらはタイドグラフには絶対に現れない「現場の答え」です。

回収時のジグの「重み」の変化を記憶する
一投ごとに、ジグを回収する際の手応えを覚えておいてください。
「さっきより重いな」とか「急に軽くなったな」という変化は、海中の潮が入れ替わった合図と言えます。
タイドグラフは「答え」ではなく「ヒント」
タイドグラフ(潮位表)は不要なものではありません。
ただし、それを「答え」だと思ってしまうと、現場での判断を誤ります。
よく「潮止まりはチャンス」と言われますが、それは必ずしも正解ではなく、魚が口を使うのは、「止まる直前」「動き出しの一瞬」といった、非常に短いタイミングであることも多いのです。
タイドグラフは、その大まかな目安を教えてくれるだけで、実際に魚が反応するかどうかは、その瞬間の潮の質によって決まります。
まとめ:潮は「数字」ではなく「現場」で読むもの
今回は、「タイドグラフ(潮位表)」では読めない、本当の潮の動きについてでしたが、いかがでしたか?
スロージギングにおける潮読みは、経験の積み重ねであり、タイドグラフは、その入り口に過ぎません。
数字では説明できない潮の変化を感じ取れるようになった時、釣りの精度は一段階上がります。
「今日はなぜ釣れたのか」また「なぜ釣れなかったのか」、その答えを、ぜひ現場で探してみてください。
それではまた!





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