
「山奥の話でしょ?」――そう思っていませんか?
静かな住宅街に、突然「熊出没警報」のアナウンスが響く・・・、そんな事態が、今や決して珍しくない時代になりました。
実際に爺も、熊に追いかけられたり、川に釣りをしに行って遭遇したりと、爺の周辺にも確実に熊が近付いてきているのは間違いありません。
あなたが暮らす街も、もしかしたらその危険と隣り合わせかもしれません。
最新情報と身を守るためのポイントを、いま一度確認してみませんか。
人身被害の状況
2025年の被害事例
死亡事例
●6月25日:青森県八甲田山系
タケノコ採りをしていた80代の女性がクマに襲われ死亡。
●6月末頃:長野県大町市
タケノコ採りをしていた40代の男性がクマに襲われ、病院で死亡。
●7月4日:岩手県北上市
自宅に侵入したクマに襲われ、80代の女性が死亡。
●7月12日:北海道福島町
新聞配達中の50代の男性がヒグマに襲われ死亡。
直後に猟師の行方が不明になる。血痕と猟銃が残されていた。
北海道福島町の事例では、死亡した男性が4日ほど前からヒグマを目撃していたらしく、狙われていた可能性もあるという事です。

被害事例
●4月9日:長野県飯山市
物置の整理中にクマと鉢合わせした60代男性が噛まれ重傷。
その後、同じ個体が住宅内部に侵入し、90代男性と60代女性が負傷。
●7月16日:福井県坂井市
釣りをしていた20代男性がクマに襲われる。
●7月21日:秋田県北秋田市
農作業中の70代男性がクマに襲われる。
2025年で秋田県内3件目の人身被害。
ここで紹介した事例はほんの一例で、全部上げればきりがないくらいの被害数です。
特に秋田県では、2025年1月から6月末までの半年間に寄せられた目撃情報は1364件にのぼり、多かった去年の2倍以上になっているそうです。
また、岩手県では、4月1日~7月4日の約3カ月の間に11件・12名の人身被害が確認されているそうで、直近の5年間と比べても約3倍の多さという事です。

自治体の注意喚起
出没警報が発令されている自治体
●青森県全域
ツキノワグマ出没警報が令和7年5月1日から11月30日までの長期間、県内全域に発令中。
4月の出没件数が過去5年比で2倍以上となったためです。
●秋田県全域
ツキノワグマ出没警報が令和7年5月8日から7月31日まで延長されて発令中。
●岩手県全域
ツキノワグマの出没に関する警報が県内全域に対して発令中。
これは7月4日に死亡事故が発生したことをうけて、注意報から格上げ。
●山形県全域
令和7年7月3日から8月31日まで出没警報が発令中。
これは6月下旬に市街地で熊目撃が多数(10件以上)報告されたため。

注意報や要注意情報が発令中の自治体
●長野県長野地域
出没注意報が長野市・須坂市・千曲市などを対象に令和7年5月9日から6月30日まで発出。
現在は期間終了。
●山梨県北杜市
出没注意喚起が行われています。
6月28日に北杜市で人身被害が発生し、県として注意喚起を強めている状況

近年の熊の行動変化
人里への出没が増加・長期化
●出没時期が早まり、かつ遅くまで続く
例年は春~秋にかけての行動が活発ですが、近年は暖冬や食物状況の変化により、冬眠期間が短縮し、春先(3月下旬)から既に目撃例があり、初冬(12月)まで出没する例が増えています。
●人里近くまで行動範囲が拡大
山林内だけでなく、里山、果樹園、住宅街近くまで行動範囲が拡大する傾向にあり、特に東北・北陸では、夜間に集落内を歩く熊や、昼間に農地に出る熊の報告が増えています。

食性と行動パターンの変化
●ブナやドングリなど堅果類の不作
近年は、ブナやミズナラの実が凶作の地域が多く、エサを求めて広範囲を移動するケースが増え、その影響により、 畑や果樹園、家畜飼料など人間由来の食物に依存する熊が増加しています。
●夜行性から昼行性へシフトする個体
本来、熊は人を避けるため夜行性に近い行動をしていましたが、人の気配が少ない時間帯である早朝・夕方に限定されず、最近は日中でも畑やゴミステーションに現れる例が各地で報告されています。
警戒心の薄れ
●人を見ても逃げない個体が増加
人里に繰り返し現れ、餌を得る経験をした熊は人慣れ(学習)してしまい、人を見てもすぐには逃げない個体が増加しており、アーバンベアとも呼ばれるようになっています。
いわゆる問題個体(ベアアタックを起こしやすい熊)の割合が増え、人身事故が増加する一因となっています。
移動距離の増大
●広範囲に移動する個体の増加
最近の追跡調査(環境省・各県のツキノワグマ調査)では、GPS首輪で追跡した個体が1日20km以上移動する例も確認されています。
食物不足や個体密度増加が背景にあり、広範囲での出没が一度に増える「警報」につながっています。

気候変動の影響
●食物源の変動
地球温暖化により、熊の主要な食物源であるブナやミズナラの結実状況が不安定になっており、豊作の翌年は熊の個体数が増加し、凶作年には人里に餌を求めて降りてくる傾向が強まります。
●冬眠期間の変化
気温の上昇により冬眠期間が短縮されたり、冬眠中の行動パターンに変化が生じたりする可能性も指摘されており、これが熊の活動期間や行動範囲に影響を与えていると考えられています。
今後の出没傾向の予測
今年(2025年)後半~秋にかけて
例年、9~11月は出没が最も増える時期です。(冬眠前に脂肪を蓄える「高摂食期」)
各地の林業試験場や環境省の速報によると、2025年のブナ・ミズナラの実は地域差が大きく、東北日本海側では凶作傾向にあり、地域によっては大凶作が予想され、秋に向けて里への出没が増加すると予測されています。
気候変動の影響による冬眠サイクルの乱れ
暖冬・積雪不足で冬眠しない熊が増えた例(青森・岩手で報告あり)があり、冬季の出没も珍しくなくなる可能性があります。
早春・晩秋に限らず、 地域によっては冬でも出没が常態化する可能性があり、通年での注意が必要です。

人里との距離がさらに近くなる
山間部の過疎化や耕作放棄地の増加により、里山が管理されず、熊の行動圏と人間活動域が重なりやすくなっています。
また、近年はゴミ収集日や果樹などの収穫期を狙って出没する熊も報告されており、 農地・果樹園・集落近くでの目撃が今後も増えると見られます。
個体数の回復と「学習熊」の増加
ツキノワグマもヒグマも、保護政策により個体数は過去数十年で回復傾向にあります。
その中で、人間から餌を得ることを覚えた問題個体が増加し、捕獲・駆除が進まない地域では、出没頻度が高止まりする可能性もあります。
人間への警戒心の低下
以前は人間を避けていた熊が、人慣れすることで警戒心が低下し、人間を見ても逃げずに近寄ってくるケースが増加しています。
これは、人里で簡単に餌を得られることを学習した個体や、若い個体で顕著に見られます。

私たちができること
熊出没警報発令地域
警報発令地域の山形・秋田・岩手・青森では、以下のような対策が推奨されています。
●朝夕の山林や農地付近の外出は控える。
●複数人で音を発しながら行動する(鈴・ラジオなど)。
●生ごみや果実残渣を屋外に放置しない。
●クマと遭遇したら静かに後退し、背を向けず向き合った状態を保つ。
●建物や車内に避難、クマ撃退スプレーの備えも有効。
家庭や集落で出来る事
●畑や果樹園の残果、家畜飼料を放置しない。
●ゴミは夜間に出さない、収集日当日の朝に出す。
●熊鈴・ラジオを携行し、音でこちらの存在を知らせる。
自治体の対策
●出没情報を即時発信するアプリやSNS運用。
●緊急捕獲隊やドローンによる追跡。
●山林管理や電気柵設置の補助。
熊に遭遇したら
何時何処で熊に遭遇するか誰も分かりませんので、常日頃からその時の対処の仕方を確認しておく事が大事です。
熊との距離がある場合
基本姿勢など
●姿勢を低くしない(しゃがまない)
自分が小動物と誤認され、捕食対象になる可能性があります。
●背を向けず、目をそらさずに熊の動きを見守る
熊を挑発しないように、じっと観察する。
●ゆっくり後退する
慌てて走ると熊の追跡本能を刺激してしまいます。
ゆっくり静かに後ずさりして距離を取る事が大事です。
熊がこちらに接近してきた場合
●パニックにならない
叫ばない、走らない。
●熊撃退スプレーを準備
可能なら噴射の構えをし、何時でも噴射できるように準備する。
●大きく見せる
両腕を広げたり、上着を広げて」、こちらの存在を大きく見せる。
●威嚇には応じない
石を投げる、棒で叩くなどはNG。
攻撃されそうなとき(最終手段)
●地面にうつ伏せになり、頭と首を腕で守る。
人身被害の状況を調べたら、この姿勢を取った方の被害の状況が、いずれも軽症だったという結果が出ているそうですので、家族皆でこの姿勢を確認し合っておく事をおすすめします。
●ザックを背負っている場合はそれを盾にして防御
●熊撃退スプレー
基本的には熊撃退スプレーを準備し、もしもに備える事が大事。
熊対策のまとめ
今回は、2025年の各地の熊出没に関する情報と、熊の行動変化、それに今後の出没傾向の予測についてでしたが、いかがでしたか?
年を追うごとに増えていく市街地への熊の出没と、人身被害ですが、今後はさらに増える事が予想されていますし、それは間違いない事だと思います。
何時何処で誰が熊と遭遇してもおかしくない時代に入ったと言えますので、家族皆で話し合い、被害に遭わないような行動を確認し合う事が大事であると思いますし、この記事がその参考になれば幸いです。
それでは皆さん、お気を付けて。





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