
スロージギングにおいて、最も過酷な役割を担っているタックルは何でしょう?
ロッドの反発力やリールの巻上力も重要ですが、それらのパワーを水深数十mに届ける「PEライン」こそが、実は釣果の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
しかし、残念ながら、PEラインを「単なる消耗品」と考えている釣り人が少なくありません。
スロージギングにおいて、PEラインは単なる糸ではなく、アングラーの意思をジグに伝え、魚のアタリをアングラーに伝える「高精度な情報伝達ケーブル」と言えます。
本記事では、PEラインの「伸び」と「張り」がスロージギングにどのような影響を与えるのかを分かりやすく解説し、状況に応じた選び方まで丁寧に紹介します。
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スロージギングにおけるPEラインの重要性
なぜPEラインが使われるのか
スロージギングでは、ほとんどのアングラーがPEラインを使用しており、その理由は大きく3つあります。
【PEラインを使う理由】
◆ 感度の高さ
PEラインは、他の素材のラインに比べて伸びが非常に少ないため、ジグの動きや魚のアタリが手元にダイレクトに伝わります。
フォール中のわずかな違和感も感じ取れるため、釣果に直結します。
◆ 細 さ
同じ強度であればナイロンやフロロよりも圧倒的に細くできるため、水の抵抗を受けにくく、狙ったレンジを正確に攻めることができます。
◆ 操作性
伸びが少ないPEラインは、自分の意図した動きをダイレクトにジグに伝えることが出来ます。
ナイロン・フロロとの違い
ナイロンやフロロカーボンラインは伸びが大きく、ショックを吸収するというメリットがあります。
しかしその分、アタリがぼやけやすく、スロージギングのような繊細な釣りには不向きです。
一方でPEラインは伸びが少なく、感度と操作性に優れているため、スロージギングに最適なラインとされています。

なぜPEラインが最強なのか
ジグを「動かす」のではなく「跳ねさせる」メカニズム
スロージギングの基本動作は、ロッドを曲げ、その復元力(反発力)を利用してジグを水中で跳ね上げることです。
このとき、PEラインにナイロンのような「伸び」があるとどうなるでしょうか。
ロッドが戻ろうとするエネルギーは、まずラインをゴムのように引き伸ばすことに消費されてしまいます。
その結果、ジグに伝わる力は角が取れたマイルドなものになり、ジグは「キレ」を失いますし、深場ではほとんど力が伝わらない可能性もあります。
スローピッチジャークで最も重要なのは、一瞬の入力でジグを水平姿勢に持ち込み、そこから「フォール」へ繋げることです。
伸びの少ないラインは、ロッドの反発をダイレクトにジグへ伝え、短い移動距離で効率よくジグを横に向かせることができます。
ラインの伸びによるパワーロス
「PEラインなんてどれも同じだろう」と思われがちですが、一般的なPEラインでも3%〜5%程度の伸度があります。
3%~5%と言うと、一見小さく思えますが、水深100mでは3m〜5mも伸びる計算になるという事です。
深場になればなるほど、この「わずかな伸び」が致命的になります。
100m先にあるジグを30cm動かしたい時、実際にはラインが伸び縮みするだけでジグは数センチしか動いていない……という現象が起こります。
超低伸度のPEライン(伸度約1%〜2%程度)を使用することで、深場でも手元で操作しているかのようなダイレクトな感覚を得ることが可能になります。
着底の瞬間を逃さない「超高感度」
スロージギングにおいて、着底直後のヒットは非常に多いものです。
しかし、伸びのあるラインは振動を吸収してしまうため、着底の瞬間や魚の微かな「前アタリ」をぼやけさせてしまいます。
低伸度ラインは、糸電話の糸をピンと張った状態と同じです。
海底の質(砂か岩か)、潮流の変化、そして魚がジグに触れただけの違和感まで、すべてを指先に伝えてくれます。
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迷ったらこのPEラインがおすすめ
いろんなPEラインがあり、どれにしようか迷って決められない場合は、以下のPEラインをおすすめします。
なお、ここで紹介するのは、近海(水深50m~100m程度)で使用する、最大ターゲットが「ブリ」を想定した、1.5号の300m巻きのPEラインを基準にしています。
コスパ重視のPEライン
Seaguar:シーガー PEX8
コスパ重視タイプは、シーガーの「シーガー PEX8」をおすすめします。
非常に安価でありながら適度な張りがあり、初心者にも扱いやすPEラインで、ライントラブルが多い初心者には非常に有難い製品です。
価格と性能のバランス型PEライン
SUNLINE:ソルティメイト インフィニティブ×8
価格と性能のバランスに優れたラインとしては、サンラインの「ソルティメイト インフィニティブ×8」をおすすめします。
同社には、「ソルティメイト アメイザー×8」という、素晴らしいPEランがありますが、それに負けず劣らずの性能と使いやすさを兼ね備えたPEラインです。
ハイパフォーマンスPEライン
ハイパフォーマンスPEラインは、シマノの「オシア 8 PE」をおすすめします。
実売価格が7,000円を超える、非常に高価なPEラインですが、「適度な張り」「滑らかさ」「強度」など、全てにおいて高性能なPEランです。
ラインの「張り」が釣果を左右する意外な理由
「張り(コシ)」の正体
PEラインの「張り」とは、簡単に言えばラインの硬さや反発力のことです。
編み込み数や密度、コーティングなどによって、この張りの強さは大きく変わります。
張りが強いラインの特徴
張りが強いラインは、糸フケが出にくく、ラインがまっすぐに近い状態を保ちやすいのが特徴です。
そのため、ロッド操作の入力がジグに伝わりやすく、操作性に優れていますし、ライントラブルが少ないというメリットもあります。

張りが弱いラインの特徴
張りが弱いラインは、しなやかで水に馴染みやすいのが特徴です。
フォール時に自然な動きを演出しやすく、食い渋り時には有効ですが、糸フケが出やすく、アタリが分かりにくくなることもあります。
ライントラブルは最大のタイムロス
ジグを落とし込んでいく際、ラインに張りがなく「しなやかすぎる」と、ガイドに絡みついたり、ベイトリールのスプール内でバックラッシュを起こしやすくなります。
特に風が強い日や、船が大きく揺れる状況下では、適度なコシ(張り)があるラインの方が放出がスムーズになり、トラブルを劇的に減らすことができます。
チャンスタイムをトラブルで無駄にしないために、張りは不可欠な要素です。

潮流の影響を最小限に抑える
水中において、ラインは常に潮流の抵抗を受けています。
張りのあるラインは、水中でも「ピン」と直線に近い状態を維持しやすくなります。
逆に張りがなくフニャフニャしたラインは、二枚潮などの複雑な流れに翻弄されやすく、大きな「糸フケ」を作ってしまいます。
糸フケが大きくなればなるほど、ジグの操作性は悪化し、アタリも伝わらなくなります。
水切れの良い、張りのあるコーティング系ラインがスロージギングで好まれるのは、この「直線性の維持」が目的です。
ジグの自走を妨げないフォール姿勢
スロージギングの主役はフォールです。
ジグが水平でフォールしている間、ラインはジグを引っ張るのではなく、ジグの動きに追従しなければなりません。
適度な張りがあるラインは、フォール中にジグの周囲で無駄に弛むことなく、かつジグの動きを阻害しない絶妙なバランスを保ちます。
これにより、ジグが本来持っている「食わせのアクション」を最大限に引き出すことができます。
伸度と張りを生む「編み数」
PEラインには主に「4本編み(4x)」と「8本編み(8x)」がありますが、スロージギングの世界では、「あえて4本編みを選ぶエキスパートも多い」のです。
4本編み vs 8本編み
【4本編みの特徴】
◆ 1本1本の原糸が太いため、根ズレに強い。
◆ 結束強度が高い
◆ 適度な張り(コシ)がある。
◆ 安価なものが多く、購入しやすい。
◆ 糸鳴りがしやすい。
◆ 表面平滑性が低く、潮流の影響を受けやすい。
「4本編み」は、適度な張りがあり、扱いやすいですが、水の抵抗を受けやすいため、潮流の影響により流されやすというデメリットもあります。
また、「糸鳴り」に関しては、全く気にならないという方もいると思いますが、実際多くの釣り人は糸鳴りによるストレスを感じるという事です。
【8本編みの特徴】
◆ 伸びが少ない。
◆ 感度が良い。
◆ 表面平滑性が高く、潮流の影響を受けにくい。
◆ 4本編みに比べて根ズレに弱い。
◆ 結束強度が低い。
◆ 4本編みに比べて高価。
「8本編み」は低伸度で感度が良くて魚のアタリを取りやすく、表面が滑らかで潮流の影響を受けにくいという特徴があります。
また、糸鳴りによるストレスが無いのも有り難いポイントです。

スロージギングには「8本編み」がおすすめ
上記の特徴を踏まえ、また個人的な考えのもと、スロージギングには「8本編み」をおすすめします。
その最大の理由としては、「伸びが少なく感度が良い」という点で、スロージギングに於いて最も大事なポイントとも言えます。
4本編みに比べて結束強度も低いと言われますが、確実な結束を行う事により強度の低下を防ぐことが出来ます。
また、耐摩耗性が低く、根ズレに弱いという特徴もありますが、それを補うためにリーダーを接続するので、これについては何の問題も無いと考えています。
糸鳴りがしないのもプラスポイントで、自分は気にならなくても、隣の釣り人に迷惑を掛けている可能性もありますので、糸鳴りはしないに越したことはありません。
次の表は、編み数による特徴を表にしたものです。
| 比較項目 | 4本編み | 8本編み | 12本編み | |||||
| 低伸度 | △ | 〇 | ◎ | |||||
| 感 度 | △ | 〇 | ◎ | |||||
| 直線強度 | △ | 〇 | ◎ | |||||
| 結束強度 | ◎ | 〇 | △ | |||||
| 耐摩耗性 | ◎ | 〇 | △ | |||||
| 表面平滑性 | △ | 〇 | ◎ | |||||
| 糸鳴りしない | △ | 〇 | ◎ | |||||
| 購入しやすさ(安価) | ◎ | 〇 | △ | |||||
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伸度と張りを生む「特殊コーティング」技術
近年は、PE素材そのものに熱をかけて引き伸ばす(延伸加工)だけでなく、繊維の隙間に特殊な樹脂を浸透させる技術が進化しています。
これにより、従来のPEでは考えられなかったレベルの「硬さ」と「低伸度」を実現したモデルが登場しています。

実践!最適なPEラインの選び方ガイド
釣り場の条件によって、扱いやすいPEラインは違ってきますので、自分はどれに当てはまるのかを考えて、PEラインを選ぶ事をおすすめします。
初心者におすすめの特性
初心者には「適度な張りがあるライン」がおすすめです。
扱いやすく、ライントラブルが少ないため、初心者の方でも釣りに集中しやすくなります。
潮が速い・深場のとき
潮が速いエリアや深場では、張りが強く細めのラインが有利です。
ラインが流されにくく、ジグをしっかり操作できます。

食い渋り・ナチュラル重視のとき
魚の活性が低いときは、しなやかなラインが効果的です。
自然なフォールで違和感を与えにくくなります。
メーカーによる違い
同じ号数でもメーカーによって張りやコーティングが異なります。
メーカーのホームページを見ると、様々な説明が書いてありますが、実際に手にしてみないと使い勝手などはわかりません。
ですので、釣り具屋の方に聞いてみたり、友人や知人から聞いてみて選び、そして実際に使ってみて、自分に合うものを見つけることが重要です。

「低伸度」「適度な張り」のおすすめのPEライン
おすすめの高性能PEライン
SUNLINE:ソルティメイト アメイザー×8
先ずは、サンラインの「ソルティメイト アメイザー×8」のを紹介します。
最高峰の強さと滑らかさの両立した、ジギング専用8本組ULT-PEラインです。
爺も以前はこの前のモデルのラインを使っていましたが、強さ、扱いやすさなど、非常に優れたラインでしたので、これはさらに高性能になっているものと思います。
Shimano:オシア 8 PE
次は、シマノの「オシア 8 PE」を紹介します。
直線強力や滑らかさなど、全てにおいて高性能なラインで、実売価格が1.5号-300mで7,000円を超える超高級ラインです。
釣りに慣れてきて、ライントラブルが無くなったら使ってみてもらいたいPEラインです。
おすすめな高コスパPEライン
Shimano:グラップラー 8 PE
先ずは、シマノの「グラップラー 8 PE」をご紹介します。
非常にコスパに優れたPEラインですが、適度な張りがあり、強度も高く、ハイエンドなPEラインに負けない性能のラインです。
SEAGUAR:シーガー PEX8
次は、シーガーの「シーガー PEX8」をご紹介します。
冒頭でもご紹介しましたが、1.5号-300mで、実売価格が2,400円程度と非常に安価ですが、性能的には全く問題の無いラインです。
ライントラブルの多い初心者の方にとっては、非常に有難いPEラインです。
まとめ:タックルの要はラインにある
スロージギングにおいて、ロッドやリールは「道具」ですが、PEラインは「道具」と「ジグ」を繋ぐ「神経」と言えます。
◆ 「伸び」の少なさは、ジグにキレのある動きを与え、海中の情報を手元に届けます。
◆ 「張り」の強さは、ライントラブルを防ぎ、潮流の中でも直線を維持させます。
「周りは釣れているのに、自分だけアタリが無い」「ジグがしっかり動いているか不安だ」と感じているなら、PEラインを見直すのも一つの手です。
多少高価でも、ラインを交換した瞬間、今まで感じ取れなかった海中の状況が手に取るように分かるかもしれません。
ラインへの投資は、決して無駄にはなりませんし、むしろそれにより「価値ある1匹」が近付くかもしれません。







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