
スロージギングのみならず、釣りを楽しんでいると避けて通れないのが「キャッチ&リリース」の問題です。
特に深場から釣り上げた魚は、水圧の変化やダメージの影響で弱っていることも多く、「リリースしても結局死んでしまうのでは?」と感じる方も多いと思います。
特にスロージギングは、水深50m〜150m、時にはそれ以上の深海をターゲットにするため、魚にかかる水圧の変化は想像を絶するものがあります。
ネット上では「深場の魚を逃がしても無意味」とか「100%死ぬ」という極論も見かけますが、実は「正しい知識とツールがあれば、魚の生存率は劇的に向上」します。
この記事では、スロージギングにおけるキャッチ&リリースの実態について、魚の死亡率や原因、正しいリリース方法まで徹底解説します。
釣り人として知っておきたい「本当に意味のあるリリース」とは何か、一緒に考えていきましょう。
それでは始めます。
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キャッチ&リリースの目的
釣りに於けるキャッチ&リリースの最大の目的は、「魚の資源を守ること」です。
特に大型個体は産卵に重要な役割を持つため、それらを守ることは釣り場全体の未来につながります。
また、人気の釣り場では魚へのプレッシャーが高く、リリースによって釣りを長く楽しめる環境を維持するという意味もあります。
キャッチ&リリースは「意味がない」と言われる理由
一方で、キャッチ&リリースは「意味がない」と言われることも多く、その理由の一つが、「リリース後の死亡率の問題」です。
特に深場の釣りでは、「どうせ死ぬなら持ち帰った方がいい」という意見もありますし、また「自己満足ではないか」という批判もあります。
しかし、これは極論であり、重要なのは状況に応じて判断することです。
リリースが有効なケースもあれば、そうでないケースもありますので、このバランスを理解することが大切です。
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なぜ「リリースしても死ぬ」と言われるのか?
減圧症によるダメージ
スロージギングで釣れた魚を海面に放した際、元気に潜っていかずにプカプカと浮いてしまう現象、これを「減圧症(水圧の変化による障害)」と言います。
魚の体内には「浮袋」というガスで満たされた器官があり、中層や深海に生息する魚は、このガスの量を調整して浮力を保っています。
しかし、スロージギングのように、深い場所から一気に釣り上げられると、周囲の水圧が急激に低下し、内部の気体が膨張します。
この膨張により、以下のような致命的なダメージが発生します。
【減圧症によるダメージ】
◆ 内臓の圧迫
膨らんだ浮袋が胃袋や腸を押し出し、口から飛び出させてしまう。
◆ 眼球の突出
頭部付近の血圧やガス圧が上がり、目が飛び出す。
◆ 血管内の気泡
血液中に溶け込んでいたガスが気泡となり、血管を塞ぐ。
「どうせ死ぬ」と言われる所以は、この外見上の痛々しさにありますが、魚は「まだ生きている」ので、ここで諦めてはいけません。
フックによるダメージ
フックが口に掛かればそれほど問題はありませんが、エラや内臓に刺さってしまった場合は致命傷になることもあります。
ファイトによる体力の消耗
大物との長時間のやり取りは魚に大きな負担をかけ、リリース後に回復できずに死んでしまうケースもあります。
水温や溶存酸素量
夏場の高水温時は、海水中の酸素量が減るため、リリース後の生存率が下がる傾向があります。
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魚種によって異なる生存率|根魚の深刻な現状
スロージギングの場合、水深50m以上の深場を狙うことが多く、その場合はリリースの難易度が一気に上がります。
特に「根魚類」は浮き袋の影響を受けやすく、リリースしても生存率が低くなる傾向があります。
一方で、青物(ブリ・カンパチなど)は比較的回復力が高く、適切に扱えば生存率も期待できます。
つまり、「魚種や水深によってリリースの意味が変わる」ということです。

リリースした魚の生存率を劇的に上げる方法
ここからは、具体的に生存率を上げるリリースのやり方を解説します。
ポイントは、「素早さ」と「ダメージの最小化」です。
ファイト時間を短くする
魚とのやり取りはできるだけ短くし、可能な限り弱らせないことが重要です。
魚に触れる時間を最小限に
魚の粘膜(ヌメリ)は、細菌から身を守るバリアです。
基本は「フィッシュグリップを使用」するか、やむを得ず直接触れる場合は、必ずグローブを着用し、海水で十分に濡らしてからにして下さい。
また、写真に収めたい場合は、手伝ってもらいながら、素早く行う事が大事です。
フックの外し方
フィッシュグリップを使って魚を吊り下げ、プライヤーを使ってフックを素早く外すします。
もしフックが飲み込まれている場合などは、魚体を傷付けないよう注意して行いますが、エラが傷付いている場合は、無理せず家に持ち帰り、美味しくいただくことをおすすめします。
バーブレスフックを使用する
がまかつの返しの無いフック「鎌鼬」を使用したり、通常のアシストフックのバーブ(返し)をプライヤー等で潰して使う事によって、フックが外しやすくなります。
また、バーブによるダメージを減らすことが出来ます。
エア抜きの活用
浮き袋が口から出ている場合や、お腹が膨らんでいる場合に行う方法で、最も一般的な方法は、専用のニードル(針)を使って浮袋の空気を抜く方法です。
◆ 刺す位置
魚の側線付近や、胸鰭の付け根裏側など、魚種によってベストな位置がありますので、事前にYoutube等で調べてから行う事が必要です。
◆ 注意点
闇雲に刺すと心臓や肝臓を傷つけ、魚を死なせてしまいますので、図解入りの解説書を携帯したり、動画で事前にシミュレーションしておくことが重要です。
エア抜きは有効な方法ではありますが、やり方を誤ると逆効果ですので、知識がない場合は無理に行わない方が安全です。

リリースジグやエコリリーサーを活用
最近、アングラーの間で主流になりつつあるのが「リリースジグ」や「エコリリーサー」です。
これは、重り(ジグ)の先に魚の口を引っ掛けるフックが付いた道具で、「魚を強制的に元の水深まで沈める」ためのツールです。
ある程度の深さまで沈めると、周囲の水圧によって膨らんだ浮袋が自然に圧縮され、魚が自力で泳げるようになります。
魚体に傷をつけないため、エア抜きよりも生存率が高いというデータもありますので、非常に有効な方法だと思います。
番外編:超ゆっくり巻上げる
明らかにリリースサイズの小さな魚が掛かった場合、「超ゆっくりと巻上げる」ことで、周囲の水圧に馴染みながら上がってくるため、浮袋が膨らむこと無く釣り上げる事が出来ます。
その場合、フックを外してリリースした魚は、何の問題も無く底へ向かって泳いでいきます。
今まで何度も行ってきましたが、水深70m程度であればほぼ100%リリース可能です。
もっと深い所でも大丈夫だと思いますが、巻上げに凄い時間が掛かるのを覚悟のうえで行って下さい。
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リリースするべき魚・持ち帰るべき魚の判断基準
小型個体はリリースすべき理由
将来の資源を守り、今後も釣りを楽しむという意味でも、小さい魚は基本的にリリースする事をおすすめします。
卵を抱えた魚体
お腹がパンパンに膨らんだメスの魚は、何千、何万という命(卵)を抱えていますので、将来を担う貴重な資源を守るという意味でも、リリースをおすすめします。
食べる分だけ持ち帰る
食べる分だけキープし、必要以上に持ち帰らないことで、資源への負担を減らせます。
ダメージが大きい魚は持ち帰る
明らかに弱っている魚や、傷付いている魚は、リリースしても生存が難しいため、持ち帰って美味しくいただく事をおすすめします。
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根魚は「一度いなくなると戻らない」
爺の生息地である三陸エリアを含め、日本近海の根魚資源は今、大きな転換期を迎えていると言われています。
スロージギングの普及により、かつては漁師さんしか届かなかった深場のポイントへ、誰もが正確にジグを落とせるようになりました。
しかし、ここで是非知っておいてほしいのが、「根魚の成長スピード」です。
【成長スピードの遅さ】
例えば、30cmを超えるクロソイやアイナメが、そのサイズになるまでに、5年〜10年という長い歳月を要することも珍しくありません。
【移動しない特性】
青物のように回遊する魚と違い、根魚はその名の通り「根(岩礁帯)」に居付く習性があります。
つまり、ある特定のポイントで良型を釣り尽くしてしまうと、そこに新しい良型が補充されるまでには、また何年もの時間が必要になるのです。
「自分一人が数匹持ち帰っても変わらないだろう」という考えが、積もり積もって「最近、あのポイントは釣れなくなったね」という結果を招いたりします。
特に三陸のような起伏の激しい海域では、一箇所のポイントにかかるプレッシャーを分散させ、小型の魚を海に帰すことが重要になります。
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釣りに於けるマナーと考え方
キャッチ&リリースで大事なのは、以下の3つのマナーや考え方ではないでしょうか。
【C&Rの考え方の基本】
◆ 価値観の違いを理解する
◆ リリースを押し付けない
◆ 持続可能な釣りを意識する
釣り人によって考え方は様々であり、正解は一つではありませんので、自分の価値観を他人に強制するのはトラブルの原因になります。
大切なのは、「これからも釣りを楽しめる環境を残すこと」だと思います。
まとめ:10年後も釣りを楽しむために
スロージギングの「キャッチ&リリース」は、単なるマナーや自己満足ではありません。
それは、「自分たちが大好きなこの遊びを、一生続けていくための投資」ではないでしょうか?
「深場の魚は死ぬ」という常識を疑い、エア抜きやリリースジグを手に取ってみてください。
リリースしても海面にポッカリ浮かんでいた魚が、力強く尾を振って深海へと消えていく姿を見ると、あなたの考えも変わると思います。
10年後、今の子供たちがスロージギングを始めた時にも、今と同じように、それ以上に魚が釣れる海であるように、今ここから一緒に作っていきましょう。
それではまた!









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